'23 Autumn & Winter

LABO | Black Mother of Pearl

Layers of black

瑪瑙とあわせて今季選んだ素材が黒蝶貝である。これもまた、素材探求を始めた最初期に取り上げた原点的素材の一つだった。過去10年の中で、他に黒い素材を取り上げたことはない。理由はシンプルで、黒蝶貝に勝る黒と出合うことがなかったからだ。

宝石というのは一般的に石自体が主役であり、輝きや色彩を重視するため、黒い宝石が登場することは稀である。けれど女性にとって黒とはとても大事な色だと思う。衣服であればうなじや手足の肌を引き立て、黒いラインによって身体の美しさを寡黙に際立たせてくれる。同じように、女性の美しさを静かに物語るような黒として、私たちは黒蝶貝と出合った。

透明な真珠層の積層から生まれる黒蝶貝の黒は色ではない。光と影でできている。瑞々しい透明感を纏った黒の奥底では、光が揺れ動き、虹彩が浮かぶ。どれ一つとっても同じ黒がない。けれどどれも瑞々しく柔らかい。それは日本の人たちの瞳の色や黒髪の美しさとも重なるものだった。

黒蝶貝は英名でBlack-lip pearlと呼ばれるように、二枚貝の縁部分にしか深い黒は生まれない。工房には50年以上前の古い黒蝶貝が残っていた。昔の方が真珠層の厚みがあり、潤みも陰影も強く浮かぶ。新しく生まれることのない有限の素材から黒を頂くことにした。以来、少しずつ、切り出しながら使っている。

10年経ってわかったこともある。使うと少しずつ質感が変わり、色はグレイッシュに、表面は曇りガラスのようになっていく。黒の中に、より光が溜まったようになる。使うと余計に美しいのだ。日本の女性たちが年を重ねていく中での小さな幸福が、この黒にはあるように思う。

'23 Autumn & Winter

LABO | Black Mother of Pearl

LOOKBOOK

受注期間:2023 9.9 - 12.25

南洋の海に生息する黒蝶貝。その艶やかな黒は透明な真珠層の重なりによって生まれるため、均一な黒色ではなく、光と影を宿したとても柔らかな墨色をしています。時とともに表情が移ろい、経年の変化が現れるのも特徴的。大人の女性にふさわしい、上品で味わい深い黒です。〈黒蝶貝〉は12月下旬までのSEASON限定受注です。