PRODUCT JOURNEY - Solitaire Engagement ring - [前編]

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PRODUCT JOURNEY

- Solitare Engagement ring -

記憶の中の憧れを形に [前編]

アトリエが長らく構想してきたものの一つに、「ソリテールリング」がありました。ソリテールとは、一粒ダイヤを掲げたスタイルのこと。きっとジュエリーと聞くとこの形を思い浮かべる方は、性別や年齢問わず多いのではないでしょうか。時を超えて長く愛せるものを作る。変わることのないシンプルなテーマを持って、今日まで生み出され続けた「王道」とも言えるソリテールの姿を見つめていくと、そこには色褪せることのない記憶と繋がっていることに気がつきました。新作エンゲージ〈Solitare ring〉の製作を綴る《PRODUCT JOURNEY》、前後編でお送りします。

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■鉱物と宝石の間

古いビジューのよう。擦りだしたシングルカットを見たとき、そう思いました。

私たちは長年〈オールドカット〉を探求しています。ダイヤの研磨技術が発達し始めたのは14世紀頃のこと。バゲットカットやエメラルドカット、16世紀にはローズカットと少しずつ発展してきました。高度な技術が入りきらないその控えめな輝きは、今から見ると不完全。ただ見方を変えると、現在のダイヤの白銀の華やかさはいわばお化粧のようなものであり、ダイヤの素顔はとても澄んだ表情なのだと気づきます。

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そして17世紀に生まれたシングルカット。放射状のカット面、角度のついたキューレット。現在主流のブリリアントカットの原点とも言われるその姿は、いわゆる宝石らしい佇まいをしています。しかしカット面は少なく、輝きはまっすぐで素直です。だからでしょうか、宝石よりも朴訥として、鉱物よりも気品がある。宝石と鉱物の間。ガラスのビジューのようなこの調和に、私たちはうんと惹かれたのでした。

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■記憶に溶け込む純粋性

シングルカットの素直な輝き。“ジュエリー”や“宝石”という言葉に纏わせがちな、華やかで硬質なイメージはそこにはありません。しかし、それらの言葉に感じるノスタルジーを、シングルカットは確かに纏っているとも感じます。

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例えば、本で見かけた挿絵。祖母や母の宝箱を覗いたとき。歳を重ねた大人の女性が身につけていた姿−−。それが実際どんな宝石だったか、高級なジュエリーだったかは定かではありません。だけどおぼろげな記憶の中で醸成された姿は、いつの日かの憧れとなって、静かに心の奥に棲み着いている。

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見事な輝きでも、ただお洒落の道具でもない。私たちがずっと作りたかった〈ソリテールリング〉は、性別年齢問わず、誰しもが触れたことのある記憶の中の形です。そしてシングルカットの純粋性は、様々なフィルターを通り抜け、見る人の記憶へとすっと溶け込んでくれる。シングルカットに確かな可能性を感じた私たちは、新たな〈ソリテールリング〉製作の舵を切ることとなりました。

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後編では〈Solitaire ring〉の形探求を中心にお届けします。シングルカットの純粋性を引き立たせる“究極の普通”を、探ります。

megumi kudo