#68 Born on earth

#68 Born on earth

私たちが水晶に惹かれるようになり、探求を始めてから何年かが経ちました。なんの変哲もない真っ透明な石は、宝石の面白さを知り始めた頃にはごくありふれた存在として映り、目に留まることもありませんでした。

振り返ってみると、初めて「美しいな」と思った水晶は思いのほか原石ではなく、人の手でつるんと磨き上げられたものでした。水滴のように張りがあって、葉の上を滑る朝露のようである。見たことのある姿に似ているから、美しいと認識できたのかもしれません。

水晶の探求を始めていく前後で、私たちが宝石を見る目は変わっていったように思います。色は鮮やかな方がいい、傷ひとつないものが素晴らしい、といった謳い文句は確かなことでもあるけれど、「宝石」というフィルターを一度外してみると別の美しさに気づくことができます。

水晶を集めている職人が、こんなことを教えてくれました。水晶は世界各地で採れる石だけど、産地による特徴が現れる。ゆえに内包物や表面の凹凸を観察してみるとその水晶の生まれた場所が分かるといいます。
土地のさまざまな景色を映しながら、あらゆる場所で生まれている。地球のかけらそのものなのだと。

大きな水晶原石には、山や海を思わせる世界が閉じ込められています。角度を変えると現れたり消えたりするので、その実態はいつまでも捉えることができません。長い時間覗き込んでいると、水の中にいるような、風とひとつになったような、あるいは夢の中にいるような浮遊感に陥ります。

あらゆる場所にある"地球のかけら"だからこそ、根源的なエレメントを感じるのかもしれません。水晶の心地よさがどこから来るのか、また少し掴めたような気がします。

弘 大石